糖尿病・代謝内科とは

糖尿病・代謝内科

当診療科では、糖尿病をはじめ、脂質異常症、高尿酸血症など代謝性疾患の診察・検査・治療を行っています。これらは、いずれも生活習慣病とされているもので、発症初期は自覚症状がほぼ現れないことが特徴の病気でもあります。そのため、病状を進行させるなどして、動脈硬化を引き起こし、やがて狭心症や心筋梗塞、脳卒中(脳出血、脳梗塞)など重篤の合併症を発症してから気づくというケースも少なくありません。

このような状況にならないためには、定期的に健康診断を受け、その結果が出た際に、血糖値、コレステロール値、血清尿酸値といった数値を確認し、医師からこれらの数値の異常を指摘されたら一度ご受診ください。診察の結果、これら生活習慣病を発症していることが確認されれば速やかに治療が行われますが、発症は確認されなかったものの、その予備軍であると指摘を受けた方につきましても予防のための治療というのも行っています。

当診療科の主な対象疾患

糖尿病

血液にはブドウ糖が含まれており、その濃度のことを血糖値と言います。この血糖値が慢性的に高い状態が糖尿病です。通常であれば、ブドウ糖は細胞に取り込まれるなどしてエネルギー源となるものですが、これが何らかの原因によって取り込まれなくなって血液中でダブついてしまっているのです。

健康な方であっても食事や糖分を含んだジュースを飲むことで血糖値は上昇していきます。ただ、膵臓で作り出されるホルモンの一種インスリンが分泌されることで再びバランスのとれた状態に戻るようになります。つまり糖尿病は、このインスリンが働かなくなることで発症するようになるのです。

1型糖尿病と2型糖尿病

なお糖尿病は大きく1型糖尿病と2型糖尿病に分けられます。1型糖尿病は、インスリンが作成される膵臓のβ細胞が自己免疫反応の異常などによって破壊されることで、インスリンがほぼ分泌されない状態を言います。1型では急激にインスリンの分泌が不足して糖尿病ケトアシドーシスといった重い症状を起こすこともあれば、2型のように時間をかけてインスリンの分泌が低下していくこともあります。比較的、若い世代に多くの患者様がみられますが、中年世代以降でも発症することがあります。

一方の2型糖尿病は、日本人の全糖尿病患者の95%ほどと言われ、日頃の生活習慣(過食、運動不足、過剰なストレス、肥満 など)や遺伝素因などが複雑に絡み合うなどして発症します。2型は膵臓が疲弊している状態ですので、インスリンの分泌が不足している(インスリン分泌低下)、もしくは分泌量が十分でもその効きが悪い状態にあります(インスリン抵抗性)。中年世代以降の方に多くの発症者が見受けられます。

このほかにも他の病気(内分泌系の病気や膵疾患 など)やステロイド薬の長期投与が引き金となって発症する二次性糖尿病、妊娠糖尿病(妊娠すると高血糖な状態になりやすくなります。完全な糖尿病ではありません)もあります。

合併症に注意

糖尿病でよく見られる症状ですが、例えば1型糖尿病の患者様で急激にインスリン不足が起きると喉が異常に渇く、頻尿・多尿、全身の倦怠感、急激な体重減少などがみられるようになりますが、1型でもゆっくりとインスリンの分泌が低下していく、あるいは2型の患者様の場合は、初期の段階では自覚症状がほぼみられません。ただ病状が進行していくと喉の異常な渇き、頻尿・多尿、全身の倦怠感、体重の減少といったことが現れるようになります。このような症状がみられたら速やかにご受診ください。

また自覚症状がないと言いましても糖尿病を発症すれば常に血管は損傷を受けている状態です。さらに放置となれば、網膜や腎臓といった細小血管が集中する部位から障害が起きて、糖尿病が原因の合併症(糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害 など)も併発するようになります。また大血管(動脈)で動脈硬化を招き、さらに悪化させると、脳卒中や狭心症、心筋梗塞といった合併症を発症することもあります。

このような状態にならないためには、糖尿病の診断を受けた時点でしっかりと血糖のコントロールを図るようにすることが大切です。治療法としては、1型であれば、体外よりインリンを補うインスリン注射になります。2型の場合は生活習慣の改善(食事療法、運動療法)から始め、それだけでは困難な場合は併せて薬物療法(経口血糖降下薬)も行います。それでも下げるのが難しければインスリン注射となります。

脂質異常症

脂質とは血液中に含まれるもので、いくつか種類があります。その中でもLDL(悪玉)コレステロールやトリグリセライド(中世脂肪)が過剰、もしくはHDL(善玉)コレステロールが少ないという場合は、脂質異常症と診断されます。その基準は空腹時の血液検査で判定することができます。

  • LDLコレステロール値≧140mg/dL(高LDLコレステロール血症)
  • 中性脂肪≧150mg/dL(高トリグリセライド血症)
  • HDLコレステロール値 <40mg/dL(低HDLコレステロール血症)

動脈硬化と関連が深いLDLコレステロール

上記の表を見てお分かりの通り、脂質異常症は3つに分類されます。そのうち動脈硬化と最も関連が深いと言われているのがLDLコレステロールです。そもそもLDLコレステロールというのは、細胞膜やホルモンの原料とされるコレステロールを全身の細胞に運ぶもので、中性脂肪はエネルギーを蓄えるという役割があります。つまり、体にとっては欠かせないものです。しかし、LDLコレステロールが血液中で過剰になれば、やがてそれが血管内に蓄積するなどして動脈硬化を起こすようになります。この疾患も自覚症状が出にくいので進行させやすく、気がつけば血管が狭窄、あるいは血栓などによって詰まるなどして、狭心症・心筋梗塞、脳卒中といった重い合併症を引き起こしていたということも少なくありません。

先にも述べましたが脂質異常症も自覚症状が現れにくいのが特徴です。そのため健康診断の結果などから、LDLコレステロール値などの数値異常を指摘されて発症が判明したというケースも珍しいことではありません。

また発症の原因に関しては、2つあると言われています。そのひとつは、脂質異常症になりやすい体質(遺伝的素因のある)の方が、高カロリーや高脂肪食を中心とした食事、慢性的な運動不足、喫煙・飲酒といったことを行うことで発症するとされる原発性脂質異常症です。もうひとつは別の病気(糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患 など)や薬の使用(ステロイド薬の長期使用)などがきっかけとなって発症する二次性脂質異常症です。

治療に関してですが、どのタイプであってもまずLDLコレステロールの数値を下げることから始めていきます。なぜなら同数値が下がるとHDLコレステロール値やトリグリセライド値も一緒になって正常になるとされているからです。基本は生活習慣の改善(食事療法、運動療法)で、それだけでは改善の兆しが見られない場合に併行してLDLコレステロールの数値を下げる薬を服用していきます。

高尿酸血症

尿酸は血液中に含まれているものですが、何かしらの原因でこれが増えている状態を高尿酸血症と言います。尿酸というのは、水にとけにくく、これが過多になると針状の結晶をした尿酸塩として血液中に存在します。そして関節に溜まってしまうと、激痛を伴う炎症発作(とくに足の親指の付け根付近)が発症しますが、これが痛風です。

なお高尿酸血症は痛風の症状が起きるまでは自覚症状が現れることはほぼありません。ただ発症の有無に関しては血液検査で確認することもできます。同検査をした際に血清尿酸値という数値が7.0mg/dL以上と判定されると高尿酸血症と診断され、この数値が確認された場合、痛風がいつ発症してもおかしくない状態です。また、痛風の症状が現れなかったとしても、痛風結節、尿路結石、腎障害、脳血管障害、心疾患といった合併症を発症するリスクを高くさせてしまうので要注意です。

先にも述べたように高尿酸血症は血液中において尿酸が過多になることで発症しますが、増えてしまう原因としては、先天的な代謝異常、造血器疾患、尿酸が排出されにくい体質といったこともありますが、尿酸のもととなるプリン体を多く含む食品(レバー類、干し椎茸、魚卵類、えび、かつお、いわしなど一部の魚介類)を必要以上に取っている、多量の飲酒、過度な無酸素運動などによって引き起こされることもありますので、日頃からの生活習慣を見直していく必要があります。

治療については、尿酸値を下げるための治療と痛風で生じる炎症発作を抑えるための治療があります。

尿酸値を下げる治療では、まず生活習慣の改善(食事療法、運動療法)を行っていきます。食事療法では、野菜、海藻、きのこ、豆類などを取るようにするほか、減塩にも努めます。またプリン体を多く含む食品は避け、お酒を飲まれる方は節酒します。さらに水分を多く摂取し、体内の尿酸を尿と一緒に排出(尿量が1日2000mL以上になるようする)していくようにします。また運動も尿酸値を下げるのに有効です。その内容は、息が弾む程度の有酸素運動(1回30分程度のウォーキング 等)でも充分ですが、継続的に行う必要があります。ただし、運動メニューについては一度医師にご相談ください。またこれらと併行して、尿酸値を下げる治療薬(尿酸の生成を減らす効果がある薬、尿酸の排出を増やす薬)も使用していきます。

一方、痛風による炎症発作の治療ですが、こちらは薬物療法が中心です。用いられるのは、NSAIDs、ステロイド、コルヒチンなどです。これらの治療で、痛みや腫れといった炎症発作が抑えられるようになったら、尿酸値を下げる治療が開始されます。